概要

ごあいさつ 教授 砂田利一(取組責任者)


現代において数学は自然科学・社会科学の様々な分野と融合して発展を遂げています。この状況を踏まえ、本大学院数学系では、平成17年度よりMTS(Multi-Track System)数理科学教育として,「理論数理コース」,「現象数理コース」,「数理教育コース」の3つのコースから融合的に選択させる複数指導体制を開始しています。この取組においては、実績あるMTSを発展させ,現代社会の要望に応ずべく,さらに充実したP-MTS (Post MTS) 数理科学教育を提案します。具体的には「自ら企画を立て実行するマネジメント能力の創発」「数理科学を社会に適用・発信するプレゼンテーション能力の創発」を目標としたステップアップしたMTSを目指します。創発 (emergence)とは,「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が,全体として現れる」という意味です。MTSで複数コースの指導を受けるだけでなく、次世代型人材として必要不可欠である企画・適用・発信能力を身につけるカリキュラムにより,局所的な複数の相互作用がさらに組織化することで,大域的に個別の要素の振る舞いを凌駕する(創発する) 効果が期待されます。


概要および採択理由(JSPS,HP掲載PDF)

 

明治大学は,大学の教育理念に基づく教育の充実と質的向上を図ることを目的に,教育改革支援本部を設置し,有為の人材を育成するための教育改革を支援している。また,この教育改革支援本部のもとに,大学院に特化した大学院教育改革推進委員会を設置し,大学院教育の改革,実質化のための支援を行っている。本事業も,これらの全学的支援体制の下に進められ,大学院教育を重視し,急速に複雑化する21世紀社会の諸問題解決に積極的な役割を果たさんとしている。数学と自然・社会科学の様々な分野との融合を実現しうる人材の育成が本計画の最終目標であるが,その為には数学の知識だけでなく,数学が適用可能となる様々な現象に接する機会を教育課程において提供することが重要である。このことを踏まえ,本専攻数学系ではいち早く平成17年度よりMTS(Multi-Track System)数理科学教育として,融合的に3つのコース「理論数理コース」,「現象数理コース」,「数理教育コース」が複数指導体制の下に進められ,幅広い数理的な知識をもった人材の育成に取り組んできており,一定の成果を得て,既に定着している。そこで我々は実績あるMTS数理科学教育を発展させ,現代社会の要望に応ずべく,さらに充実したP-MTS (Post MTS) 数理科学教育プログラムを提案することにした。以下の点を集中的に強化する。

  • 自ら企画を立て実行するマネジメント能力の創発
  • 数理科学を社会に適用・発信するプレゼンテーション能力の創発

創発 (emergence) とは,「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が,全体として現れる」という意味である。学生は自らのニーズに合わせて,「理論数理コース」,「現象数理コース」,「数理教育コース」の3コースに複数参加し,次世代型人材として必要不可欠である企画・適用・発信能力および数理科学の知識を身につけるカリキュラムに取り組む。これにより,局所的な複数の相互作用がさらに組織化することで,大域的に個別の要素の振る舞いを凌駕する (創発する) 効果,いうならば1+1+1が5にも10にもなるような効果が期待される。これこそが,P-MTS数理科学教育の真価である。

本プログラムによって輩出される人材は,社会との関りを重視した数理科学教育によって得た知識をベースに,それを実社会に適用・発信することができる次世代型の研究者・高度専門職業人・専修免許を持つ中高校教員である。特に輩出される研究者は,数学と社会との関りに造詣が深く,将来の数理科学研究をリードする人材であることが期待される。

以下,我々が今回提案する P-MTS 数理科学教育に関する概略を述べる。各学生に修士論文・博士論文を指導する主指導教員と数学課題研究を指導する副指導教員が就く複数指導制を堅持する。さらに多様化する学生のニーズにこたえるため,学生は主副指導教員と各コースへの参加形態を相談・決定するという,オーダーメイド教育を行う。

企画発信能力の創発に向け,新科目としてプレゼンテーション課題研究を設置し,それぞれのコース活動を実質化する。プレゼンテーション課題研究では,複数の教員と数名の学生からなるグループ (クラスタ) を形成し,それらグループに対して,自らがオーガナイズし,自らがプレゼンターとなる研究発表会,教育デザイン発表会等の開催を義務とする。

新たに専攻内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を設置する。SNSとは,インターネット環境を介して,学生個人の活動を発信し,自発的なコミュニティの作成を可能とする最新のツールである。SNSにおいては,プロフィール・ウェブログを通じて学生は自分の研究内容を日常的に公開し,ネットコミュニティにより教員と学生は密に情報共有することができる。プレゼンテーション課題研究の取り組み・進行もSNSを通じて公開する。これにより,学生はWeb 2.0時代の新コミュニケーション形態を実体験しながら,研究を進めることができる。

博士後期課程の学生には,大学院チューターを配置し,きめ細かな指導を行う。また,国内外他大学院生との共同研究や研究会・勉強会の開催を通じてプレゼンテーション・マネジメント能力を高める。それをサポートする仕組みとして,国内外他大学院生も参加できるようにSNSを機能拡張する予定である。
本プログラムの特徴は,学生の主体的な参加による能力の創発を促すことにより,社会に数学を積極的に適用・発信できる次世代型人材を輩出することにある。本プログラムは,現在指摘されているような大学院における数理科学教育の問題点を解決する一つのモデルケースとして,広く他大学院の参考となるものと確信する。

前期・後期課程の概要図

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